物件に対して


「気に入った物件が見つかって、バレエスタジオに改装するのにお見積りが欲しいのですが」

 

ほとんどの先生方がこう切り出されます。

立地・広さ・家賃・路面か上階か、現在の生徒さん達が通える範囲か・・・そんな事を総合的に判断して物件を探されたのでしょうね。

確かに上の条件の良し悪しはスタジオを運営する先生にしか評価出来ないポイントです。

でもこの物件で本当に大丈夫なのか心配なんでしょうね。

誰かに判断してもらいたくて当社にご連絡いただいたのだと思います。

 

ではその相談を受けてバレエスタジオマイスターはどうするのか?

 

1.まずは概算見積もりを算出します
2.次に現地調査
3.最後に防振防音テスト

 

こんな手順で物件を評価していきます。

 

1.まずは概算見積もりを算出します

 

最初のご相談メールのお返事で、いつも決まったお尋ねをしています。

「図面を送っていただけますか?」

 

これは概算見積もりを算出するのに必要な図面で、建築図面があれば最高ですが、寸法の入っていない不動産の募集図面でも、あなたのスケッチでも大丈夫です。そこにレッスンをするアクティングエリアと鏡を貼る範囲を書き込んでいただければ見積できます。

 

そんないい加減な図面で大丈夫なの?

 

それが大丈夫なんです。

 

理由があります。先生方が最初に知りたいのはだいたいの工事費用です。自分が想像していた予算に収まりそうなのか、オーバーしてしまうのか、それさえわかれば満足です。バレエスタジオの場合、改装工事に占める金額の大きいものが床と鏡です。アクティングエリアと鏡の範囲が分れば過去の工事のデーターから概算見積が作れます。新規の間仕切りや照明計画などもおおよその金額を見込んでおくことが可能です。

 

バレエスタジオの事業計画的にその金額で行けそうなのか判断してください。

予算に余裕があれば、照明計画や内装デザインにこだわる事が出来ますし、予算がなければアクティングエリアや鏡を減らすなど調整が必要です。

いずれにせよ、物件を見に行く前に工事費用の目安が分るのは良い事ですよね。

 

(注)そもそも物件がスタジオに向いていない例もあります。その場合、概算見積もりをせずに他の物件探しをお勧めしています。

こちらのブログをご参照ください → バレエスタジオ用地を探すなら鉄骨造はやめた方がいい

 

 

2.次に現地調査

 

概算見積りが事業計画的にOKであれば、次に現地調査に向かいます。この時初めてご依頼主の先生とお会いするのでマイスターはドキドキしています。HPやブログをアクティブに活用されている先生ばかりではないので、あまり情報がない状態での初対面です。一方、先生方はエーゼン大塚建設の情報を良くご覧になっているので、マイスターの事も予習済み。

 

「Youtubeで見たそのままの感じですね」と、ニコニコされながら私の名刺を受取られます。

 

内覧の時間よりも早く待ち合わせて、先生方からどんなスタジオにしたいかヒアリングします。メールや電話のやり取りでは伝わらなかったスタジオ作りへのこだわりやどんなポリシーで生徒さんの指導にあたっているかを聞く事が出来るからです。新スタジオでレッスンしている様子をイメージ出来ないとこれから現地調査をするポイントを見損なってしまいますからね。

 

 さて、現地では次のようなポイントをチャックしていきます。

 

・建物の構造(柱や梁、移動できないハパイプシャフト)

・床の下地(コンクリート直か2重床か)

・天井裏(配管や小梁の位置、スラブの仕様)

・窓(遮音性能は?排煙窓ではないか?)

・お隣との界壁構造(防音工事が可能か?)

・簡易防振テスト・防音テスト

 

ごめんなさい、少し専門語が混じってきましたね。

細かな説明は省きますが、広くて天井の高い理想のバレエスタジオを作るために必要な情報なんです。

 

ただ簡易防振テストだけは大事なのでちょっと説明します。

 

建物を設計した構造設計士がものすごく優秀だった場合、無駄のない設計をし、最小限の材料で、最高の構造体を作ってくれます。私達プロに言わせると「経済設計に長けている」建物という事になります。でもこうした建築は振動が伝わりやすい物です。それを図面だけで判断するのは結構難しい。だから簡単なテストをするわけです。

 

その場で飛び跳ねて、下階に伝わる振動や音を体感するんです。

コンクリート造で丈夫かと思っていたら、ズーンズーンと凄い振動が使わってきたりビックリすることがあります。その場には関係者が多いほどいいですね、大家さんに仲介不動産、下階のテナントさんなどみんなで振動の伝わり方を共有しておくと後々トラブルになりません。

 

簡易防振テストや他の項目も、先生方とおしゃべりしながらチェックしていきます。このおしゃべりが大事なんです。

現地を見ながら、「男の子用の更衣室はどうします?」とか、「お月謝は振込ですか?ここで集金ですか?」など、プランニングに関わる情報をどんどん引き出していきます。実際に寸法を測るのは一番最後です。シビアな寸法はこの時点ではあまり重要ではないからです、建築図面が手に入れば寸法取りもしない事もあります。そう言えは以前にこんなことを言われました。

 

「他の施工会社は偉そうな雰囲気の人が『ここをバレエスタジオにするならこうだ』と、一方的に提案してくる横でアシスタントの人が黙々と寸法を測っていました。でも、大塚さんは全然寸法を測らないで私の話を聞いてくれてたんですよ・・・」

 

この人は何でこんなにも話を聞いてくれるのか不思議に思っていたそうです。

バレエスタジオマイスターからすると不思議でもなく、当たり前のことなんですけどね

 

 

3.最後に防振防音テスト

 

現地調査のあと、見積の修正をします。図面では読み取れなかった部分の訂正や、改めて追加になった内装工事や看板などを含めた修正見積もりです。でもですよ、その見積もりが事業計画的にOKだとしても、あわてて賃貸契約を結ばないでください。

 

はやる気持ちはわかりますが、いま一度慎重になりましょう。「見積もりも予算内だし、早く賃貸契約を済ませてエーゼン大塚建設に工事も発注しよう!」そんな気持ちは嬉しいのですが、念のために実物大の防振床テストをしましょう!これはバレエスタジオマイスターのこだわりです。

 

床を30㎝も上げてOKなら、完璧な防振床が作れます。

でもそんなに上げたら天井が低くなってしまうし、防振床の重量に建物の強度が耐えられません。

新築でバレエスタジオを作るならともかく、既存の物件を改装するのであれば、レッスンで伝わる振動を「ゼロ」にすることは出来ません。

 

どこまで費用をかけてもいいか?どこまで床をあげてもいいか?どのくらいの振動なら許容できるか?

 

その見極めをするためにどうしても実物大防振床でのテストが必要になります。もちろん関係者全員に集まっていただきます。これはバレエスタジオ主催の先生だけでなく、大家さんテナントさん仲介不動産さんみんなの利益を守ることになります。是非実施するべきです!関係者みんなが納得した上で賃貸契約を結びましょう。

 

実物大防振床テストまでやってようやく物件の評価が完了です!

 

 


物件に対して